JR指宿枕崎線を活かしたまちづくりプロジェクト。新たな発見と出会う「のんびり列車旅」

JR指宿枕崎線を活かしたまちづくりプロジェクト。新たな発見と出会う「のんびり列車旅」
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JR指宿枕崎線は、指宿駅からJR日本最南端に位置する小さな無人駅「西大山駅」、そしてJR日本最南端の始発・終着駅「枕崎駅」へと続く路線です。沿線では、四季折々の草花とともに、錦江湾や桜島、開聞岳などの美しい景観を楽しむことができます。

この路線を生かした地域づくりを目指して立ち上がったのが、南薩地域振興局による「JR指宿枕崎線を活かしたまちづくりプロジェクト」。路線を活用することで、〝私たちのまちをもっと元気にしよう!〟と、2023年から地元の皆さんと一緒に取り組んできました。
そして2025年、このプロジェクトにかかわるメンバーによる座談会を実施。これまでの活動を振り返りながら、JR指宿枕崎線での列車旅やまちの魅力について地元目線で語ってもらいました。
また、プロジェクトで制作した全14のモデルコースから、指宿~枕崎間を列車で巡りながら“まち散策”を楽しめる、お勧めの2コースをアレンジして紹介。ぜひチェックして、のんびり列車旅へ出かけてみて。

線路がつなぐ人とまち「JR指宿枕崎線の現在・過去・未来」活動について

▲プロジェクトにかかわるメンバーで、今回の座談会に参加した5名
(左下)指宿市/川尻元気プロジェクト 浦野 敦さん、(真ん中)枕崎市/枕ラボ!永迫 昌之さん、(右下)南九州市/地域おこし協力隊 小野寺 宗貴さん、(左上)指宿市/指宿市観光協会 下拂 岳人さん、(右上)枕崎市/中原水産 中原 晋司さん

2年間にわたる活動に関わったメンバーが、JR指宿枕崎線の現在・過去・未来について熱く語り合った座談会の一部を紹介します。

Q.JR指宿枕崎線の魅力を教えてください

  1. 永迫さん:プロジェクトの活動で、枕崎駅で「お出迎え」をしていた時、列車を降りた途端「やった~」って手を挙げる男性がいらっしゃいました。聞くと、国内縦断旅のゴールでした。枕崎が、北から南までつながっている路線の最南端の始発・終着駅ということ自体がものすごく価値の高いものであると改めて思いました。移動を時間とお金の効率から離れた世界で楽しむのも良いですね。

  1. 中原さん:私はあえて月に何回かJRを利用しています。鹿児島と枕崎を移動する3時間、お酒や食事を楽しみながらくつろげば、気持ちをリセットできる感覚になります。路線の中でもマル秘スポットと言えるのが、枕崎ならではの「だし国体験」です。薩摩板敷駅を過ぎてトンネルを抜けたら、急に港町と海の景色が広がって、かつお節をいぶす〝だしの香り〟が車窓から入ってくるんです。「トンネルを抜けたら雪国だった」ならぬ「トンネルを抜けたら〝だし国〟だった」。五感で枕崎を体感できる瞬間です。

  1. 小野寺さん:車を運転すると前方しか見られませんが、列車の車窓からは視界が広がり、雄大な景色を見ることができます。その地域、その季節ならではの景色を眺められて、乗るたびに新しい発見がありますね。

  1. 浦野さん: 最近、西大山駅や開聞駅の周りにはカフェ、旧徳光小学校にはブルワリーもできています。西大山から長崎鼻辺りを周遊できるサイクリングコースができると一段と楽しくなりそうだなと思います。実際、海外からのお客さまの中には、自転車で回りたいという方もいらっしゃいます。自転車を分解しないで列車に乗せられるようになれば、薩摩川尻駅から鹿児島中央駅まで行って、そのまま桜島に行けたりすると夢を描いています。

▲座談会中の様子

Q.活動の中で特に印象に残っていることや手応えについて教えてください

  1. 下拂さん:印象に残っているのは、西大山駅で行った草刈りです。日本最南端の駅として観光客に人気のスポットですが、草が生い茂って景観に影響が出ていたので、地域の方々と協力して草刈りを行いました。駅がすっきりと整い、観光客からも「ありがとう」と声をかけられて、地域貢献につながる活動だと実感しました。景色の美しさは、人の手と心で守られていると強く感じました。

  1. 小野寺さん:西大山駅は、国内はもちろん、海外からのお客さまも数多くいらっしゃいます。草刈り中も香港、台湾、札幌からの旅行者が来られていました。旅の目的地が美しいと、それだけで価値が上がるのではないかと感じました。

  1. 浦野さん:活動の一環で地元の指宿を回った時、生活圏を改めて眺めることで、いろいろ気付くこともありました。中でも指宿駅周辺はカフェなどもたくさんできていたので、夜も楽しめるスポットとして活用できるのではと再確認できました。

  1. 永迫さん:活動1年目にプロジェクト会議の講演で川西先生(※)から教えていただいた鉄道の話が印象的で、単なる物流や移動の手段ではなく「地域で保存していく」という新しい視点が刺激になりました。実際に枕崎駅を「日本最南端の始発・終着駅」と意識してまちを歩いてみると、見慣れた風景に旅情が感じられ〝鉄道浪漫〟を少し理解できたように思いました。

※川西先生・・・JR枕崎駅駅舎や肥薩おれんじ鉄道ロゴデザインを制作した建築家・デザイナーの川西康之さん

  1. 小野寺さん:私は特にSNS発信を担当させていただき、地名の由来や地元の特産品など、新たな発見がありました。車で移動するのではなく、歩いてじっくりまちを見るという体験を通じて、まち並みや看板の面白さや魅力を感じることもできました。もう一つ、松ヶ浦の景観整備に関わらせていただいたこともよかったと思っています。

  1. 中原さん:特に松ヶ浦駅は、列車と開聞岳の景観が相まって美しいので、写真愛好家をはじめとする人々が集まる、経済効果にもつながるポイントだと思います。プロジェクト以外でも、JR九州と地元の方が共同で草刈りをするなど、景観整備に取り組んでいますね。プロジェクトでは、私は事務局を運営する側として携わりました。一般的にローカル線は悲観的に語られることが多い中、地域住民、行政、JR九州の方々も前向きで、建設的な議論が何度も出ていたことに、大きな可能性を感じました。一方、実際に草刈りなどの作業に従事した体験から、路線を維持することの大変さも身をもって感じました。

▲「第2回あなたが選ぶかごしま景観大賞」で大賞を受賞した松ヶ浦駅(撮影:葛岡克紀)

Q.今後の展望などをお話しください

  1. 下拂さん:プロジェクトを通して作成したモデルコースを、より多くの方に周知する活動に努めようと思います。また、指宿枕崎線を活用したイベントを、地域の皆さんと協力して実現していきたいと思います。

  1. 浦野さん:西大山駅の沿線にヒマワリもしくはコスモスを植えていきたいです。トラクターがある農家の協力を得られたら比較的コストもかからないので、ぜひ実現したいです。

  1. 小野寺さん:列車の存在を地元の方々に印象づけるために今年7月、南九州市頴娃町郡地区のコスモス畑の一画でバレーボール大会を開催しました。記念写真の背景には列車が写っています。まちに列車のある風景を未来にも伝えていけたらと。今後も沿線の景色に〝色〟を付ける活動を続けたいと考えています。

  1. 永迫さん:夜の駅舎を楽しんでもらうため、昨年から枕ラボの主催で、枕崎駅前で夜カフェを始めました。フリーコーヒー&紅茶と「マクトーク」というミニ講演会のようなコーナーを設けています。実行委員長を務める「全国ローカル鉄道サポーターズサミット」でも、駅前広場でのイベントを企画しています。地域の資源である駅を地域の人たちに親しみをもって利用してもらうことで、JR指宿枕崎線が自分たちの路線だという「マイレール意識」を強くすることが最初のステップだと思います。これが広がれば「この路線をもっと大切にしよう」につながっていくと思うんです。

  1. 中原さん:地域に魅力的なコンテンツがなければ人は来ないと思いますので、私個人だけではなく、会社ぐるみでプランを作り込むことに力を注いできました。列車の待ち時間を利用した〝かつお節削り体験〟や物販などの実績があります。今後も、鉄道を絡めたさまざまなプランを提案し、事業としても成り立たせていきたいです。その他、枕崎には、鰹節だけではなく、お茶や焼酎などいろんな資源があるので、地域の多業種がコラボして総合力で勝負する方法もあると思います。

▲今回座談会に参加されなかったプロジェクトメンバーの皆さん

指宿~枕崎間を列車で巡りながら“まち散策”、お勧めモデルコース

▲プロジェクトで制作した全14のモデルコースは、ウェブサイトにて

プロジェクトで制作したモデルコースは、ウェブサイトで公開しています。グルメコースやウォーキングコース、登山コースと、指宿~枕崎間を列車で巡りながら“まち散策”を楽しめるものばかり。車窓からの景色や途中の寄り道スポットで、ふだんの生活では見落としていた新しい魅力を発見してみませんか。

◆お勧めのモデルコース①:枕崎を満喫!街歩き&グルメコース

【出発】本土最南端の始発・終着駅、枕崎駅へ

枕崎駅は本土最南端の始発・終着駅。日本最北端・北海道稚内駅からレールが続いています。
2013年には同駅舎がグッドデザイン賞を受賞。駅舎前には鹿児島県の形が浮かぶトリックアートやカツオ一本釣り船をイメージしたトイレなどがあり、遊び心あふれる広場になっています。

「車止標識」に注目!

終着駅である枕崎駅には、この先に線路がないことを示す標識「車止標識」が。

訪れたらチェックしてみて。

【自転車で約9分】絶品海鮮丼と立神岩を望む雄大な景色を堪能「ONE(ワン)」

枕崎で取れた、新鮮な魚介を使った海鮮丼が評判の「ONE」。並1,100円~特上2,200円。その他一品料理や、冬には海鮮鍋を楽しめます。海岸に面した大きな窓からは、枕崎市のシンボル「立神岩」を望むことができます。晴れた日には黒島、竹島、硫黄島が見えることもあるそう。雄大な景色を眺めながら、海の幸を堪能しませんか。
店舗横にはウッドデッキを併設。店内とはひと味違う開放的な空間で、食事を満喫できます。

ONE(ワン)
住所:鹿児島県枕崎市岩戸町33 
☎0993-76-1139 
営業時間:11:30〜14:30、18:00~21:00 
定休日:水曜夜、木曜
駐車場:有 
Instagram▶@one_kaisendon

☆周辺の立ち寄りスポット

【自転車で約15分】枕崎お魚センター
2024年改装。枕崎漁港に水揚げされた鮮魚やかつお加工品を販売。食堂も人気です。

【自転車で約25分】火之神公園
沖にそびえる標高42mの神秘的な「立神岩」を望めます。行楽シーズンはキャンプやピクニックもお勧め。

【自転車で約20分】薩摩酒造花渡川蒸溜所明治蔵
歴史ある焼酎の製造風景を目の前で見学できます。見学後は売店でお土産も購入できます。

【自転車で約10分】枕崎なぎさ温泉
岩造りの露天風呂から東シナ海へ沈む夕日や夜景を楽しめます。ぜひ疲れを癒やして。

◆お勧めのモデルコース②:指宿名物を満喫!朝からととのう砂むしコース

【自転車で約7分】「ST.college Coffee & Breakfast」朝食とランチを楽しめるおしゃれカフェ

指宿駅近く、朝7時から開くカフェ。メルボルンのカフェ文化を取り入れたモーニングやランチが人気で、アボカドをぜいたくに使った「スマッシュアボカド」、きのこたっぷりの「ブルスケッタ」などが楽しめます。木のぬくもりに包まれた空間は、地元の人たちの憩いの場になっています。散策の拠点として、心も体も満たされる時間をぜひ。
グリーンのおしゃれな外観。コーヒーやパウンドケーキ、キッシュなどテイクアウトもOK。気軽に立ち寄って。

ST.college Coffee & Breakfast
住所:鹿児島県指宿市十町1801-9 
営業時間:モーニング 7:00~10:00、ランチ10:00~17:00、テイクアウト7:00~18:00
定休日:水・木曜休(不定休あり) 
駐車場:有
Instagram▶@st.college9

【自転車で約7分】砂むし会館「砂楽」旅気分と癒やしをかなえる砂むし温泉へ!

指宿名物といえば砂むし温泉。「砂楽」は屋根付きの砂むし場があり、天候を気にせず楽しめます。砂かけ師の丁寧な手仕事で体の芯から温まり、湯上がりには黒豚ラーメンなどご当地グルメも満喫できますよ。観光客に人気ですが、日常の疲れを癒やし、まちの魅力を改めて味わえるのも地元だからこそ。休日にのんびり過ごしてみませんか。

階段アート「夜明け」やイーブイマンホールなど映える撮影スポットもチェック。湯上がりに観光気分でパチリ。

砂むし会館「砂楽(さらく)」
住所:鹿児島県指宿市湯の浜5-25-18 ☎0993-23-3900
営業時間:8:30~12:00、13:00~21:00(12:00~13:00は受付休止、受付終了20:00、土・日曜・祝日は12:00~13:00も営業)
定休日:無休(7・12月に休館あり) 
駐車場:有 
※入浴料金はHPをチェック
http://ibusuki-saraku.jp/

【自転車で約3分】「ゆるり+(ゆるりと)」季節を映す菓子と抹茶で心安らぐひととき

2024年にオープンした和カフェは、落ち着いた雰囲気の中で、抹茶や手網焙煎コーヒー、季節の和菓子が楽しめます。月替わりの練り切りや、開聞岳をモチーフにしたレアチーズケーキなど、目にも美しいお菓子がずらり。茶室「ゆるり庵」では、気軽な茶道体験も可能です。観光の合間はもちろん、心を整えるひとときにぴったり!
木の温かみあふれる店内で、庭を眺めながらゆったりと。和と洋が交わる穏やかなお茶時間を味わってみて。

ゆるり+(ゆるりと)
住所:鹿児島県指宿市十二町2128-2 ☎0993-23-4473
営業時間:11:00~16:00  
定休日:月・火・水曜休(不定休あり) 
駐車場:有  
Instagram▶@cafe.yururito

【10/25】第4回 全国ローカル鉄道 サポーターズサミットin枕崎を開催!

「全国ローカル鉄道サポーターズサミット」が、10月25日(土)枕崎市で開催。全国のローカル鉄道の関係者やファンが集まり、魅力や活性化について語り合います。
枕崎駅前では飲食ブースが並ぶイベント(12:00~20:30分予定)も実施!

【会場】枕崎市市民会館( JR枕崎駅から徒歩10分)交流会は枕崎駅前広場
【時間】サミット13:30~17:00、交流会17:30~19:40
【参加費】1,000円 事前申し込み不要(当日受け付け・高校生以下無料)※交流会1ドリンクチケット付き

詳しくは、「枕崎市観光ナビサイト まく旅」で▶https://www.makutabi.jp/events/1571/

サミット スケジュール
13:30 ~ 開会
 ■事例発表…肥薩線、吉都線、指宿枕崎線
 ■基調講演「指宿枕崎線〝未来〟への提案」
  川西康之さん(株式会社イチバンセン代表)
 ■シンポジウム「指宿枕崎線 地域との未来像を語る」
  コーディネーター:中原晋司さん
  パネリスト:川西康之さん、鐵坊主さん(鉄道解説系
  YouTuber)、 鈴木圭祐さん(鹿児島県交通政策課長)
 ■サミット宣言、レール引き継ぎ式
17:00 ~ 閉会

【主催】第4回全国ローカル鉄道サポーターズサミットin枕崎 実行委員会
一般社団法人 枕ラボ!、公益社団法人 枕崎青年会議所、枕崎商工会議所青年部、中原水産株式会社、NPO法人頴娃おこそ会


【お問い合わせ先】
南薩地域振興局
総務企画部総務企画課
Tel:0993-52-1307
鹿児島県南さつま市加世田東本町8-13 
8:30〜17:15 土・日曜、祝日休

本記事はライターが取材・校正を行った上で作成した記事です。
内容は2025年10月時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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