
鹿児島中央駅、天文館から車で約10分。西原商会アリーナの近くに店を構える「可否館(こーひーかん)」は、2026年で創業41年を迎える、自家焙煎ネルドリップのコーヒーの専門店です。民藝品が息づくお店としても知られ、県外から訪れる人や、長年通い続ける常連客も多く、地元でも知る人ぞ知る純喫茶として親しまれています。



道路沿いにある店舗ののれんをくぐり、一歩店内に足を踏み入れると、外の気配がすっと遠のくほど別世界の空間が広がります。
カウンターとテーブル席が並ぶ店内では、談笑する人の声やカップを置く音、床のきしむ音に、豆をブレンドする音などの生活音とジャズが重なり、「可否館」ならではの空気に引きこまれていきます。
民藝品を見て、触れて、使う楽しさ

季節ごとに入れ替えられる店内の民藝品は、オーナーの永田さんがこれまで少しずつ集めてきたもの。
お母さまの影響を受け、幼いころから多くの民藝品に囲まれて育った永田さんは、「魚座民藝店(ぎょざみんげいてん)」が身近にある環境で、その感性を育んできました。
中学生のときに初めて手に入れたのは、ライディングビューロー。すると今度は、それに合うスタンドがほしくなり、椅子がほしくなり、次は飾りが…。そうして、気づけば民藝の世界に深く魅了されていったといいます。

『“用の美”と言われる民藝品』
日常で使われることを前提につくられた民藝品は、“用”を突き詰めることで、自然と“美”が生まれると永田さんは話します。その使い心地や、手に馴染む感覚を味わうことができるのも「可否館」の大きな魅力です。


純喫茶と民藝、そして一杯のコーヒーへ

店を始めるなら、民藝品とともに、おいしいコーヒーを味わえる場所にしたいと考えていた永田さん。「当時は、おいしいコーヒーを出すお店に足を運び、焙煎する音に耳をすませていました。とにかくいいものに触れて、自分で何度もやってみる。目の前の豆をどうしたらおいしくできるのか。飲んでくれる人の笑顔を思い浮かべながら、わくわくしながら、夢中でやってきました」。
積み重ねてきた経験と感覚を重ねながら、豆と向き合い、「この味にしたい」と思い描いた先へと近づいていく。その過程を経て引き出された、風味、甘み、香り、舌触りが、「可否館」の一杯のコーヒーです。
◆香りを引き出すための焙煎と、豆へのまなざし

「可否館」で使うのは、スペシャルティコーヒーと呼ばれる高品質な豆のみ。産地や品質を見極め、納得したものだけを仕入れています。
焙煎で何より大切にしているのは、香りです。
ドラムの穴から直接火が生豆に当たる直下型焙煎機を使い、火加減の調整はまさに真剣勝負。深く、そして均一に煎り上げるため、焙煎中は一瞬たりとも目を離さず、音で状態を聞き分けるといいます。
焙煎前も焙煎後も、豆を一粒ずつ手に取り、状態を確かめながら欠点豆を取り除くハンドピックを行うことで、雑味のないコーヒーに仕上がります。

◆希少なストレートと、個性豊かなブレンド
コーヒーは、温度が落ち着く3口目あたりから、本来の味が感じられるといいます。ゆっくりと温度が下がっていく過程での香りや味の変化を楽しむためにも、すぐに飲み干さず、時間をかけて味わうのがおすすめ。
コーヒーメニューは、ストレートとブレンドがあり、ストレートのなかには、希少な豆もそろいます。

なかでも注目したいのが、永田さん自らがイエメンを訪れ、生産者と直接会うことで仕入れることができた「イブラヒム・モカ」です。イエメン西部の山岳地帯(バニー・イスマイル村など)で生産される最高級のモカコーヒー豆で、「コーヒーの女王」とも称されます。日本で味わえる店は多くなく、貴重な一杯です。
ブレンドは、「香りのブレンド(中煎り)」「調和のブレンド(中深煎り)」「ほろ苦みのブレンド(深煎り)」の3種類。そのなかでも人気なのが、「ほろ苦みのブレンド(深煎り)」です。口にふくんだ瞬間、舌のうえで苦みが転がり、後を追うようにコクと香りが広がります。苦みが苦手な人にも、おすすめの一杯です。
コーヒーの時間を楽しむ、ケーキとトースト

「可否館」のフードメニューは、ケーキとはちみつシナモントースト。
ケーキは、いちき串木野市の「YANO CAKE TEN MOKU(ヤノケーキテン モク)」と、鹿児島中央駅近くの「パティスリーくろだ」のもの並びます。この日は、「ガトーショコラ」や「バナナケーキ」、「ヨーグルトポムポム」などがありました。

「ヨーグルトポムポム」は、ヨーグルトとりんごを使った素朴でさっぱりとした味わい。深煎りコーヒーとの相性がいい「ガトーショコラ」は、チョコレートグレーズがかかった、口あたりしっとりの濃厚なケーキです。

「はちみつシナモントースト」に使われているのは、高見馬場電停近くのベーカリー「Panis(パニス)」のパン。外はサクッと香ばしく、中はふんわり。噛むと、ほどよい甘さのはちみつがじゅわっと広がり、シナモンの香りがやさしく鼻に抜けていきます。
どちも単品はもちろん、「本日の珈琲」と一緒に楽しめるセットメニューで楽しむことができます。

「可否館」には、長年通い続けるお客さんと、ここで働くスタッフ。この店ならではの質らいと、コーヒーを大切に思う人たちが自然と集まる純喫茶です。人と人とのやり取りや、交わされる何気ない会話のなかに、長く続いてきた営みが静かに感じられます。ゆったりと過ごしたい時間に、そっと訪れてみてください。

可否館(こーひーかん)
- 住所
- 鹿児島県鹿児島市永吉2丁目30−10
- 電話番号
- 099-286-0678
- 営業時間
- 10:00~20:00
- 定休日
- 第1・3・5水曜日
- 可能な支払い方法
- 現金・電子マネー(paypayのみ)
- 駐車場
-
店舗前:4台
第2駐車場:2台(1番と5番)
第3駐車場:3台(A・B・C)
コインパーキングあり - @kou_hi_kan
- ホームページ
- https://coffee-kan.com/