5人の〝キラリ〟女性が決定。輝く取り組みを共に応援!
南日本リビング新聞社が、県内企業の協賛の下、女性の事業や取り組みをたたえる「かごしまキラリ大賞」。第2回となる今回は47人がエントリーし、厳正な審査を経て5人の受賞者が決定しました。特集では、その〝キラリ〟と輝く顔ぶれを紹介します。

鹿児島で〝厄介者〟とされてきた火山灰「シラス」を活用し、〝地球に優しく、人に役立つものづくり〟に取り組む上原さん。2024年に起業、洗浄剤などの生活用品や農業用資材「オリジンジオ®」を開発しました。家庭で使う洗浄剤は人に優しく、畑で使う資材は土をどんどん豊かに、環境にもうれしい循環型の仕組みを実現。「地域資源であるシラスで農業を守り、美しい地球を未来に残すため、その可能性を全国へ発信していきます」


【インタビュー】
鹿児島の火山灰シラスを環境に優しい商品へ!
鹿児島で〝厄介者〟とされてきた火山灰「シラス」。その地域資源に新たな価値を見いだし、〝地球に優しく、人に役立つものづくり〟に取り組んでいるのが、「エシカルティ」代表の上原直子さんです。
鹿児島市東佐多町にある、父親のシラスバルーン製造会社で約30年、商品開発に携わってきました。「シラスを高温で焼いて風船状に加工した〝シラスバルーン〟は、軽く断熱性・耐熱性に優れ、工業材料として使われています。シラスの可能性を多くの人に知ってほしい、という思いがずっとありました」と話します。
そこで着目したのが、丸くきめ細かな粒子のシラスバルーンを活用した商品づくり。家事による手荒れを娘に心配されたことをきっかけに、人にも環境にも優しい「エコクレンザー」を開発します。
また、粗い面と細かい面を持つ二層構造の「角質落とし」は、削らずに角質を落とせる、優しい使い心地が人気の商品です。「お客さまから〝悩みが解決した〟と声をいただくと本当にうれしいですね」
さらには「サツマイモの病気で困っている農家の方々の力になりたい」と、一から勉強・研究して生まれたのが「オリジンジオ®」。微生物と根の働きを活性化させる土壌改良材です。少ない量で作物が強く育つため、環境に配慮した資材として世界でも注目されています。これまで開発した商品は「かごしまの新特産品コンクール」で、3年連続入賞を果たしました。
“未来を生きる子どもたちに美しい環境を残したい”
これらの商品をブランディングするため分社化し、2024年に起業。「お金も人脈も時間もない中で、支援機関やデザイナーなど専門家に支えられながら、走り続けてきました」と振り返ります。
周囲の人や環境への感謝を胸に、挑戦を重ねる上原さん。「未来を生きる子どもたちに美しい環境を残すため、これからも鹿児島の火山灰シラスの可能性を全国へ発信していきたいです」
■PROFILE:うえはら・なおこ
1971年鹿児島市生まれ。高校卒業後、鹿児島交通でバスガイドとして勤務。その後父が創業したシラスバルーン製造会社・豊和直(とわな)で経理や商品開発に携わる。2024年に起業し現職。趣味は仕事。家族とのランチや温泉でリフレッシュ

伊佐市を拠点に、ドローン技術を活用しながら農業のスマート化に取り組む「Azure Lab.」。人手不足と高齢化が進む農家からの依頼で、農薬や肥料、種などを散布しています。2024年に発足、女性3人で活動。スクールや体験会なども行いながら、仲間作りにも積極的です。「結婚・出産後のキャリアに悩んだこともありましたが、ドローンとの出合いが転機に! 女性が活躍できる場を広げて、地域の未来を支えていきたいです」


【インタビュー】
ドローン技術を活用し「地域の未来を支えたい」
農業が盛んな伊佐市を拠点に、ドローン技術を活用しながら農業のスマート化に取り組む「Azure Lab.」。人手不足と高齢化が進む農家からの依頼で農薬や肥料などを散布しています。「フットワークの軽さも売りにしていて、依頼があれば県内全域に駆け付けます」と代表取締役の上下絵里さんは話します。
ドローンとの出合いは4年前。建設業に携わる夫から〝もう一人申し込んだら、講習代が安くなるんだけど受けてみない?〟と誘われたことだったといいます。「娘が生まれた直後で初めての育児に奮闘しながら幸せな毎日でした。でもどこか物足りなさを感じる自分もいました。今後のことを考えたときに、育児も仕事も両立しながら輝くママになりたいと思ったんです」
資格取得後、仕事の幅を広げたいと考えていた時に知り合ったのが、北海道の「ママミーアキャット」。全国でいち早く女性によるドローン散布を始めたチームです。〝技術を学びたい〟とさっそく出掛けた北海道。幼い子どもを連れての研修では「義理の両親や家族の助けなしではかないませんでした。本当に感謝しています」と振り返ります。
“徹底した安全管理と丁寧な作業が評判に”
2024年には会社発足。親戚の肥實さん母娘と3人で「ママミーアキャット九州支部」としても始動しました。
実績のない中、農業祭などのイベントでブースを巡って名刺を配ることから開始。初めは〝本当に女性だけで大丈夫?〟と信用してもらえないことも多々。そんな中でも「まず、信頼を得るためにできることから取り組もう」と、農薬指導士やドローンインストラクターの資格を取得するなど技術を高め、徹底した安全管理と丁寧な作業で評判に。JA鹿児島県経済連が担う防除作業の一部を受託するなど活動は広がります。「今年はドローン技術を活用した〝ドローン米〟にも挑戦。女性が活躍できる場を広げ、地域の未来を支えていきたいです」
■PROFILE:かみした・えり
1996年福岡市生まれ。2019年に関西外国語大学を卒業、ワーキングホリデーでオーストラリアへ。コロナを機に帰国、結婚して伊佐市へ。子育ての傍らドローンの資格を取得し、義父の経営するUP-DOWN(建設業)に入社、24年会社設立。家族は夫と4歳と2歳の子ども

4人の子どもを持つ茂岡さん。自身が子育てに悩んだ経験から、産前産後に相談先が分からず不安を抱える母親の力になろうと2022年に助産院を開業しました。助産師やセラピストとして働きながら、 母子を支援する126の施設や市のサービスをまとめた冊子「子育て楽しむマップかごしま」を制作。母親同士がリアルに交流できる場も提供しています。先月助産院を中央駅近くに移転。「頼れる場とつながり、子育てを笑顔で楽しんでほしいです」


【インタビュー】
「一人で頑張らなくていい」産前産後のママに笑顔を
「子育てに自信がない。今がつらい─と悩みや不安を抱えているお母さんたちに〝一人で頑張らなくていい〟と伝えたいです」。そう話すのは2022年にふわり助産院を開業した茂岡希さん。助産師として産前産後ケアに携わりながら、母子に役立つ情報の提供や、母親同士が交流できる場づくりを通し、子育てを支援しています。
自身も4人の子どもを育てるシングルマザー。第1子出産後、知り合いもいない土地で孤独な子育てを経験したことが活動の原点に。「頼れる人がおらず、情報に振り回され、眠れなくなるほど追い詰められました」。そんな中、助産院の子育てサロンで母親たちと出会い、共感や情報を得て救われたといいます。「故郷の奄美では困った時は頼り合い、地域で子育てするのが当たり前。自分と同じように悩むお母さんたちを支える仕組みを鹿児島でも作りたい」
その思いから24年に生まれたのが「子育て楽しむマップかごしま」です。茂岡さんの呼びかけに共感したママ仲間が集まり、6人のチームで制作。子育てを支援する施設やサービスを紹介しています。昨年は126の施設を掲載した冊子として2万部を発行し、ウェブ版も公開中です。
また、マップの掲載店や専門家が集まるイベント「いいお産フェス」も開催。地域で人と人がつながる〝助け合いの輪〟を広げています。
“「お母さん代表」として家族と地域の未来を育む”
今年2月、鹿児島中央駅近くに助産院を移転しました。「施術でお母さんの緊張がほぐれ、涙をぽろぽろ流しながら本音が出ることも。心に余白が生まれたら自然と笑顔に、家族にも優しくなれます」
4月からは滞在型デイケアをスタート。ゆっくり入浴して食事を取り、安心して休むことで、笑顔で子育てしてほしいと願っています。「私はお母さん代表。次世代の子どもたちが〝つらい時は頼っていいんだ〟と思える社会を地域で作っていきたいですね」
■PROFILE:しげおか・のぞみ
1991年奄美大島・加計呂麻島生まれ。2014年宮崎大学医学部看護学科卒業後、福岡、名古屋、鹿児島の産婦人科病院に勤務。4人の子育てをしながら助産師・セラピストとして活動し、2022年に「ふわり助産院」を開業。趣味・特技は頭やおなかほぐしの施術

看護師として30年ほど勤務する中、「家に帰りたい、ただ普通に暮らしたい」という当たり前の願いもかなわぬまま、最期を迎える人を数多く見てきた河野さん。2017年、病院でも施設でもない、もうひとつのわが家として「ホームホスピス鹿児島」を立ち上げました。「居住者は朝起きる時間も寝る時間もそれぞれ。一人ひとりが最期までその人らしく生ききる、マニュアルのない支援を緩和ケア認定看護師、介護福祉士、ヘルパーで支えています」


【インタビュー】
「自分らしく生き切る」暮らしの中で最期を
人生100年時代。最期をどこで、どのように迎えるかは、多くの人にとって大きな関心事です。病院でも介護施設でもない、〝第2の家〟として広がる「ホームホスピス」。人生の最期をその人らしく過ごせるよう、緩和ケア認定看護師や介護福祉士、ヘルパーが24時間体制で、家族に代わって暮らしを支えています。
日置市伊集院町にある「もくれんの家」は、鹿児島県初のホームホスピスとして8年前に開設。理事長の河野博美さんは「看護師として約30年働く中で、〝家に帰りたい、普通に暮らしたい〟という願いもかなわぬまま、最期を迎える人を多く見てきました。治すだけでなく、その人の生き方に寄り添う看護の必要性を感じました」と話します。
現在は6、7人が一つの家で共同生活を送り、起床や就寝の時間もそれぞれ。食事の支度の音や匂い、笑い声など、生活の音や気配に囲まれて暮らしています。医療的ケアが必要な場合は、訪問診療や訪問看護などを利用。「医療と介護、家族、地域が自然につながり、暮らしと看取りを切れ目なく支えています」
“最期に寄り添う覚悟と苦難を超え見えてきたもの”
一方で、運営の道のりは苦難の連続でした。「維持するために立ち上げた訪問看護ステーションは業績不振で半年で閉業。多額の借金を抱え、眠れない日々が続きました。マニュアルのないケアに戸惑うスタッフの離職も重なりました」と河野さん。運営が軌道に乗り始めたのは4年目に入ったころから。ホームホスピスという形が地域に少しずつ理解されるようになり、取り組みが実を結び出します。
踏ん張り続けてこられたのは、最期まで自分らしく生き切った住人たちの姿があったから。「最期に立ち会うことは〝人生の最後の授業〟を見せてもらっているよう」。だからこそ「その人の人生を、胸を張って送り出してあげたい」と、一人ひとりに寄り添いながら〝生き切る〟ことの意味を問い続けています。
■PROFILE:こうの・ひろみ
1963年肝属郡錦江町田代生まれ。白鳳女子短期大学(現大和大学白鳳短期大学部)緩和ケア認定看護課程を卒業後、鹿児島市内の緩和ケア病棟等で約30年勤務。2017年に鹿児島初のホームホスピス「もくれんの家」を立ち上げる。今年4月、明和に2棟目を開所

東京からUターンし、2023年に指宿市で国産小麦のベーグル専門店を開業した松嶋さん。SNSでの発信力と確かな商品力で人気店へと成長させました。子育てと仕事の両立の難しさに直面した経験から、〝女性が生活環境をハンデにせず力を発揮できる場所を作りたい〟と、独自の組織運営システムを構築。働きたくても働けない主婦や子育て世代が無理なく活躍できる雇用環境も実現します。今夏には雇用拡大を見据えた新店舗もスタート予定。


【インタビュー】
好きなベーグルを仕事に「居場所と感じる職場へ」
2023年に指宿市で国産小麦のベーグル店を開業し、イベントでも行列ができるほど人気店へと成長させた松嶋紗綾香さん。その活動の原点には〝働き方〟に向き合ってきた自身の経験がありました。
好奇心旺盛で、好きなことへの情熱を軸にキャリアを築いてきた松嶋さん。東京でピザ店に勤務し、ウエディングプランナーを経て、30歳で鹿児島にUターン。しかし、出産後は仕事との両立に悩み、「子どもにも会社にも謝ってばかりで、自分を責め続ける日々でした」と振り返ります。
そこで「生活環境をハンデとせず、好きな仕事も家族も大事にできる場所をつくりたい」と起業。「その結果、家族と過ごす時間が増え、仕事と家庭をうまく切り替えられるようになりました。また、生きづらさを感じていた自身の〝繊細さ〟が、今では商品開発や環境づくりの強みにもなっています」とほほ笑みます。
“やりがいで人生を豊かにベーグル店から広がる雇用”
単なる職場ではなく〝居場所〟と思える環境を目指し、自分が大事にしたいことを無理なく両立できる働き方を重視。「採用する際には、一人ひとりの役割や将来のキャリアを共有し、必要とされていると実感してもらうことを大切にしています」と松嶋さん。
現在は〝ここで働きたい〟と声をかけられ、自ら集まった男女5人が在籍。高い定着率と熟練度の向上を実現し、全員が生き生きと活躍しています。「ただこなすのではなく、自分の人生をより良くするために働いてほしい。意味のある仕事の積み重ねがやりがいとなり、それがお店の魅力につながると思っています」
雇用拡大のため、今夏にはクレープ店を新たにオープン。今後はリラクゼーションやカフェの展開も視野に入れています。「指宿といえば温泉と絶景。そこに新たな立ち寄りスポットが加わり、ここに来れば癒やされる、そんな魅力がまち全体の心地よさにつながればうれしいです」と夢を描きます。
■PROFILE:まつしま・さやか 1984年指宿市育ち。鹿児島県立短期大学文学科卒業後に上京し、飲食店や結婚式場で経験を積む。30歳で鹿児島へ戻り、結婚式場や広告代理店に勤務。2023年ベーグル店「bagel.m」を開業し、昨年から独自の組織運営システムを導入。小6の子どもの母
【審査会リポート】
2月に行われた最終審査会では、審査員それぞれの立場や経験から活発な意見が交わされました。「応援したい」という共感だけでなく、「持続性」や「地域への広がり」といった視点からも真剣な議論が重ねられ、未来への期待を込めて受賞者を決定。鹿児島で頑張る女性の挑戦を後押しする場として、かごしまキラリ大賞の意義を改めて確認する審査会となりました。
【審査員】
鹿児島市インキュベーション・マネージャー 片平 成さん
鹿児島市産業創出課 前田 愛さん
鹿児島県よろず支援拠点 鎌田 香さん
鹿児島大学 南九州・南西諸島域イノベーションセンター 村上 加奈子さん
南日本リビング新聞社 西村 尚子
主催/南日本リビング新聞社
協賛/あさひ会 かねこクリニック 鹿児島相互信用金庫
SHIROYAMA HOTEL kagoshima スズキ自販鹿児島 積善社 飛鳥会館 久永
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後援/鹿児島県 鹿児島市 鹿児島銀行 鹿児島信用金庫 南日本銀行