
JR熊本駅から鹿児島本線や三角線の列車で南へ2駅、10分弱で最寄り駅の「川尻(かわしり)駅」に着きます。まちの歴史は古く、鎌倉時代から水運で栄え、廻船問屋が立ち並び、薩摩街道の宿場町としてもにぎわいました。
今回、われわれまち歩き4人衆は熊本駅近くからバスを利用したので、川尻町バス停で下車。降りるやいなや、バス停前のうどん屋の看板が舟形をしていることに驚かされました。何という徹底ぶり。さすが熊本市が「歴まち重点区域」に指定しているだけのことはあります。
1)川沿いを歩き米蔵へ
「では、どこから回り始めますかね?」と散策町図をチェック。
「やはり、水運のまちというから、川沿いに歩きましょう!」ということで意見が一致しました。


川尻は、緑川水系の支流・加勢川河口に船着き場が整備され、外港の三角港ができるまでは、熊本藩の内港(貿易港や軍港)として栄えたといわれます。年貢米を積んだ船が往き来した頃の記憶は、米を備蓄していた「熊本藩川尻米蔵」跡の展示資料館(有料)で見ることができます。


ちなみに、川尻から熊本城下に米を運ぶ川舟のための運河・無田川も掘られました。



■米蔵周辺の立ち寄りスポットには「お菓子のルフィ」も展示

蔵前通りで立ち寄った「川尻公会堂」。ここは、地元の人が利用できる公の場で、一般来場者の見学も無料で受け入れてくれます。大宴会場としても使える広間や緞帳を備えた舞台も整っています。川尻公会堂も熊本地震で被災しましたが、地元の人々の熱い思いを反映させてよみがえりました。


川尻では、舟形の精霊流し行事も受け継がれていて、公会堂にも飾られていました。さらに目を引いたのが、お菓子で作ったアート作品の数々。熊本とゆかりの深いアニメ作品の一つ、ONE PIECEをテーマにした「お菓子のルフィ」も飾られています。


公会堂を背に、まちあるき再開。公会堂前の船着き場近くには恵比須さまが祭られています。厄除けなど道中の安全を願った旅人も多かったことでしょう。この恵比須さまの祠(ほこら)の側面をよく見ると十字架の文様が。天草と同様に、この地にも隠れキリシタンの厚い信仰の跡がうかがえます。


2)蔵前通りは歴史の道

瑞鷹(ずいよう)酒造を創業したころから現存する「吉村邸宅」。
江戸末期から明治初期にかけての建築とされ、熊本市の景観重要建築物です。
■西郷どんゆかりの本営跡も
蔵前通りを東に向かって歩くと、うなぎ屋、西南戦争のときに西郷隆盛が本営を構えた跡、赤酒や細川藩の御国酒として愛される瑞鷹などを醸す酒蔵があります。
3)工芸館周辺は匠の町
バス通りに出ると、舟を看板にした先ほどのうどん屋、アイスクリームも販売する鍵工房、刃物屋など、個性的な町並みが目を楽しませてくれます。


のんびり散策していると、六地蔵も現れました。

最後は、瑞鷹の試飲もできる「東肥大正蔵」へ。販売所の奥へ案内され、迷路の先にたどり着いたのが「くまもと工芸会館」でした。実は中通路でつながっていました。工芸会館は入館無料で、クラフト実演を見学したり、有料のワークショップを通して、伝統の匠の技を体感できます。そうこうしているうちに1階が閉館時間になってしまったので、われわれは蔵に戻って締めの試飲を楽しみました。

蔵のすぐ近くにある「御菓子処 天明堂」に寄る時間がないなと話していたら、「試飲していてくださいね。代わりに買ってきてあげますよ」とおもてなしの声。無事にお目当ての「酒カステラ」も手に入れ、試飲後に求めた5合瓶で膨らんだ手提げ袋を抱えて、熊本駅へとタクシーを飛ばした4人衆でした。新幹線の中でさっそく酒カステラを食べた1人は、大吟醸香るしっとり食感にうっとりしていました。(おわり)