古事記や日本書紀にも登場する熊襲族(くまそぞく)。かつて九州南部に住んでいた熊襲族は、クマのように勇猛な人々であったと伝えられています。鹿児島県霧島市の隼人町にある「熊襲の穴」は、熊襲族の首領カワカミタケルが、女装したヤマトタケルノミコトに誅殺されたという伝説が残る場所です。今回は、このパワースポットとも呼ばれるミステリアスな洞窟をご紹介しましょう。熊襲の穴の中では、モダンアートも楽しめますよ!
妙見温泉の森と渓谷の間にひっそりと佇む熊襲の穴
霧島市の中心部を流れる天降川。天降川沿いには、和風旅館や昔ながらの湯治宿などが軒を連ねる妙見温泉があります。緑濃い森や渓谷などが広がる自然豊かなこのゾーンは、都会の喧騒から離れ、静けさの中で過ごしたい旅行者に年間を通して人気のあるスポットです。
熊襲の穴は、妙見温泉の老舗旅館「妙見石原荘」の近くの森の中にひっそりと佇むように存在しています。妙見石原荘から南に120mほど進むと、「熊襲の穴」と書かれた看板が見えてきます。 駐車場に車を停めて、林の中の階段を徒歩で10分ほど上がると、小さな口を開けた巨石が見えてきます。
森の中の想像以上に急な階段をひたすら上ります。途中、後ろを振り返ると下に落ちてしまいそうな感覚に陥ります。ところどころ休みながら、ゆっくり進むのがお勧めです。この神秘的な森では、もしかすると人間以外の訪問者とすれ違うかもしれません!
「本当に入れるの?」びっくりするほど小さな洞窟の入り口
階段の終わりまで上ると、目の前に現れるのは大きな石の塊です。
「熊襲の穴への入り口はどこ?」と迷ってしまうかもしれません。
照明スイッチをONにして、岩の裂け目の小さく狭い入り口から、腰を屈むようにして入ります。のぞいてみても中の光が見えないので、「入ってもだいじょうぶかな?」と心配になってしまいますが、勇気を出して進むと石の階段が現れます。少し上ると、入り口からは想像できない100畳ほどの広さのスペースが姿を現します。洞窟内部には美術家の萩原貞行さんが描いたモダンアートが広がり、独自の世界観が謎めいた空間を生み出しています。実際に訪れた人しか分からない、あの世との境のような空気感です。
穴の暗く小さな入り口を見て、驚いて引き返す人もいるほど!勇気を出して一歩踏み出せば、洞窟探検のワクワク感を味わえますよ。
熊襲の穴 謎の壁画に迫る
「なぜあんな場所に絵を描こうと思ったのだろう…」「どのくらい掛かって仕上げたのだろう」と疑問に思い、後日、熊襲の穴の壁画を描いた萩原貞行さんに会いに出かけてきました。
-
洞窟に1カ月半通い、絵を完成させました。最初に熊襲の穴に入った時、神秘的なものを感じた。山や海など、大自然と対話し祈りを捧げていた太古の人々。太陽や月、星などを描き、祭祀(さいし)空間の場をつくりたかった。1万年先までつなげられたら。